「もしも」の時までペットと暮らせる社会へ ~ペット信託・遺言~
先日、動物法務支援ネットワーク(ホーム – 動物法務支援ネットワーク)さんの勉強会に参加し、「ペット信託」やペットのための遺言についてお話を伺う機会がありました。
獣医師として日々診療をしていると飼い主さんからときどきこんな言葉を耳にします。
「もう年だから、この子が亡くなったら新しく動物を飼うのはやめておこうと思います」
もちろん、動物を迎える以上、その命を最期まで預かる責任があります。自分の年齢や健康状態を考えることは、とても大切なことです。
けれどその一方で、動物と暮らすことが、高齢になった方の生きがいや生活の張り、そして大きな心の支えになっていることも、私たちはよく知っています。
「自分に何かあったら、この子はどうなるのだろう」
その不安を少しでも小さくする方法のひとつが、「ペット信託」や「ペットについての遺言」です。
日本では、法律上、犬や猫に直接財産を遺すことはできません。
そこで、例えば自分が亡くなったり、病気や施設入所などによって飼育を続けられなくなった場合に備え、あらかじめ動物を引き受けてくれる人や施設を決め、その後の飼育や医療に必要なお金を管理し、適切に支払える仕組みを作っておく方法があります。
信託では、「誰にお金を管理してもらうのか」「誰が実際に動物を飼育するのか」「どのような目的でそのお金を使うのか」といったことをあらかじめ設計することができます。
また遺言では、財産を譲る代わりにペットの世話をお願いする「負担付遺贈」という方法なども考えられます。
ただ、お金だけを残せば安心というわけではありません。
どこで暮らしてほしいのか。
どんな食事をしているのか。
持病はあるのか。
かかりつけの動物病院はどこなのか。
高齢になったとき、どこまで積極的な治療を望むのか。
動物は自分の希望を言葉で説明することができません。
だからこそ、飼い主さんが元気なうちに、その子についての情報や希望を誰かに引き継げる形にしておくことには、とても大きな意味があると思います。
そして今回の勉強会で、改めて感じたことがあります。
動物とその飼い主さんを支えるために必要なのは、獣医療だけではないということです。
獣医師は病気を診療することはできます。
けれど、飼い主さんが亡くなった後の財産管理や遺言、契約を作ることは、法律の専門家の力が必要です。
反対に、法律の仕組みだけを作っても、その動物の健康状態や必要な医療、生活の質については、獣医療や動物福祉の視点が必要になります。
それぞれの専門家が、それぞれの得意な分野を持ち寄る。
動物を飼う事はこうした連携が今後ますます必要になると感じています。
a-handsでは、獣医療で「動物を助ける」ということだけではなく、人と動物が安心して暮らし続けるための仕組みを作っていけたらと考えています。
高齢になったから、動物と暮らすことを最初から諦めなければならない社会ではなく、
「もしものときにも、この子を託せる場所や仕組みがある」
そう思える社会であれば、人も動物も、もう少し安心して一緒に歳を重ねることができるのではないでしょうか。
獣医療、法律、福祉、そして地域。さまざまな関連団体とつながりながら、「動物と最後まで安心して暮らせる社会」をa-handsは少しずつ形にしていきたいと思っています。
