獣医師向けコラム

譲渡活動を始める ~センターからの引出し~

執筆者: 宮下めぐみ

公開日:

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譲渡活動を始める ~センターからの引出し~

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団体として譲渡活動をするにあたって、そのどうぶつをどこから引き取るか?

獣医師会や保護団体経由など色々な方法があると思いますが、引き取り場所の一つとして「自治体の動物愛護センター」があります。

今回はa-handsがどうやってセンターの登録団体になったかをお話します。

(a-handsは埼玉県の動物指導センターの登録団体として登録されています。)

●埼玉県動物指導センター: 関連リンク(登録団体など) – 埼玉県

登録団体名はa-handsですが、保護どうぶつの管理、譲渡場所は私の病院「エルザどうぶつ福祉病院」として登録されており、センターから保護どうぶつ(猫)を引き出し保護、譲渡することを許可されている団体となっています。

登録団体になるにはかなり色々な審査がありました。審査は大変でしたが貴重な経験でした。

もちろん各自治体やそのセンターによってその登録の基準や審査は異なると思いますが、参考例の一つとしてa-handsが登録した埼玉県をあげさせていただきます。

ざっくり言うと以下の4つの過程を経てやっと登録団体になれました。

【 ① 書類審査 ② 面談、テスト ③ 講習受講 ④現地調査 】

① 書類審査

書類は「申請書」や「誓約書」以外に添付書類が山のようにありました。

その一部の例だと、「定款」「譲渡に係る人員一覧」「譲渡契約書」「譲渡のフローが分かる資料」「管理施設の平面図等の資料」「代表の活動経歴」「収支報告」「通帳の写し」などなど。。

動物取扱業の申請よりも書類が必要でした。

② 面談、テスト

なんと最初にテストがありました!

動物愛護法や狂犬病予防法などの関連法規やどうぶつの病気に関する知識のテストでした。

私は獣医師なのである程度回答ができましたが、獣医師以外の人だとかなり難しいテストだと思います。

テストは講習の一環で、その後にすぐ答え合わせをしたので、特にこれで審査をしているというわけではなさそうでした。

面談は提出資料を確認しながら質問を受けたりしました。

③ 講習受講

関連法規や人獣共通感染症を含む動物の病気についての講習がありました。

私は獣医師なので、病気の部分は簡略化してくれたかもしれません。

特にどうぶつを初めて飼う里親さんには伝えてほしい資料(中毒になるものや危険なこと、マイクロチップや予防などの事)などをいただくことができました。

確かに大事な事ですよね。

④ 現地調査

① 、②、③の審査が通ったあとに保護どうぶつの管理現場の現地調査がありました。

保護どうぶつを収容した時にまずどこで管理するか?

入院などの管理動物に感染症などが感染しないような消毒体制がとれているか?

温度管理や衛生面は問題ないか?

センターの獣医師さんと担当者さんが現地をみながら質問をして私が受け応えをしながら一時間半ほど調査と確認をしてくれました。

上記の審査がすべて通り、晴れて登録団体になることになることができました。

この審査が厳しいのか普通なのかはわかりませんが、自治体の譲渡団体として認めてもらえるには色々なハードルがあることがわかりました。

確かに、考えてみれば動物を譲渡するという立場は、動物を販売や虐待など悪用しないかという事や人獣共通感染症の視点など人の暮らしを守るという視点も大事なので、こういった審査があることは至極当たり前の事なのだと思います。

審査後には譲渡に関する責任感も増した気がします。

現地調査後のアドバイスを参考に病院でも管理している保護どうぶつの食器の消毒方法などを変えたりしました。

こういった感じで、外部の人に施設に入ってもらうことは色々気づきもありとてもいい事だと思います。

今後も保護どうぶつにより良い管理施設と譲渡を心がけていきます。

著者について

宮下めぐみ

宮下めぐみ

麻布大学 獣医学部卒業  一般財団法人a-hands 代表理事 株式会社m-hands 代表取締役 東京都獣医師会 理事 ヤマザキ動物看護大学 非常勤講師 キャリアコンサルタント 「どうぶつとその周りの人を幸せにする」を信条とし、西東京市のエルザどうぶつ福祉病院の院長として診療を行う傍ら保護どうぶつの保護譲渡活動や獣医師会の社会的活動に従事している。自身でもチワワのクレア、保護ネコのリム、スイをかわいがっている。
random wan nyan frame ルナ(写真:左)
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