めぐみの想い

トライアルの勧め ~譲渡できなかった事例から感じたこと~

執筆者: 宮下めぐみ

公開日:

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トライアルの勧め

~譲渡できなかった事例から感じたこと~

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今回、二人の息子さんがいるご家族に生後1ヵ月ほどの保護ネコをトライアルとして預けました。

結果として譲渡はできずに返ってきたのですが、とても意味があるトライアルだと感じたのでご紹介します。

そのご家族は全員、子猫を飼いたいという思いがあったのですが、長男さんが猫のアレルギー数値が高いという事を気にされていて、相談を受けました。

ただ数値だけではわからない事も多いので、実際にどうなるかはトライアルしてみてから決めてみては? と私はトライアルの後押しをしました。

結果、やはり長男さんにアレルギーの症状が出てしまい、トライアル開始後10日ぐらいで子猫は病院に返ってきました。

子猫を返しに来た次男さんは泣きながら子猫を返してくれました。

「いい飼い主に必ず渡すよ、お兄ちゃんもいつか飼えるようになったら猫を飼ってね。」と伝えて子猫を受取り、私も涙がでました。

●その後のお母様からのコメントです

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人懐っこく、甘えん坊で好奇心旺盛な子猫は我が家に幸せを沢山運んでくれました。

次男には辛い思いをさせてしまいました。

けれど、小さな命と真剣に向き合った事でお別れを悲しむだけでなく、自分の将来を色々と考えるきっかけになったようです。

子猫の幸せを一番に考え、家族で一生懸命悩んだ結果です。

素敵なご家族と出会えることを願っています。

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10日という短い時間でしたが、ご家族は子猫の可愛さを知り、その命の温かさ、重み、世話をすることの大変さを知ってくれたのだと思います。

写真は次男さんが子猫の写真を使ってつくってくれたものとのこと。

愛情があふれていますね。

たぶん、次男さんはいつか猫が飼えるようになったら飼いたいと自分の将来を想像してくれたのでしょう。愛おしい存在と自分が一緒に穏やかに過ごせる未来を夢見てくれたのでしょう。

やはり、どうぶつを飼う事は世界平和につながると言っても過言ではないのです。

子猫は10日間とてもかわいがられたようで、病院に返ってきてからすぐにヤンチャさが爆発していました。

譲渡に結びつかなくても、トライアル自体がとても意味があるものになった事例です。

ペットショップの子犬や子猫と違って、保護どうぶつの場合はトライアルができる事がメリットだと思います。

ただ、「トライアルがうまくいかなかったら、どうぶつがかわいそう!」という事がハードルになっていて踏み切れない方も多いようです。

確かにトライアルが失敗して環境が短期間で変わったりする事でどうぶつにとって負担になる事例も中にはあるかと思います。

しかし大切にかわいがってもらっている場合、私の経験上どうぶつの体と心にとってはそれほどマイナスにはならないと思っていますし、マイナスにならないように獣医師がフォローしていく事も重要だと思います。

どうぶつを飼う事にあまりに慎重になりすぎてその機会を無くしてしまう事は私は本当に残念に思っています。

上記のように、トライアル期間だけでもどうぶつの飼育はその家族に幸せを運んでくれるとても素晴らしい事だと信じているからです。

 

トライアルしてみたいけれど、ちょっと迷っている。。という方はぜひお気軽にご相談ください。

著者について

宮下めぐみ

宮下めぐみ

麻布大学 獣医学部卒業  一般財団法人a-hands 代表理事 株式会社m-hands 代表取締役 東京都獣医師会 理事 ヤマザキ動物看護大学 非常勤講師 キャリアコンサルタント 「どうぶつとその周りの人を幸せにする」を信条とし、西東京市のエルザどうぶつ福祉病院の院長として診療を行う傍ら保護どうぶつの保護譲渡活動や獣医師会の社会的活動に従事している。自身でもチワワのクレア、保護ネコのリム、スイをかわいがっている。
random wan nyan frame ふみ(写真:右下)
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