獣医師向けコラム

「保護譲渡をするなら知っておきたい動物取扱業の届出」

執筆者: a-hands 事務局

公開日:

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保護譲渡をするなら知っておきたい動物取扱業の届出

獣医師:箱崎 加奈子

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1. はじめに

動物病院で保護どうぶつの保護・譲渡を行う場合、動物取扱業の届出が関わってくる可能性があることを理解しておくことが重要です。

動物病院では、すでにトリミングやペットホテルなどのために「第一種動物取扱業」の届出をしているケースが多いかと思いますが、保護譲渡を非営利で行うのか、営利として扱うのかを明確に意識する必要があります。

保護・譲渡の方法によっては「営利」とみなされる場合があり、その場合は適切な届出を行う必要があります。

2. 動物取扱業とは?

「動物取扱業」とは、動物の販売・保管・貸出・訓練・展示などを行う事業者が、一定の基準を守るために自治体への届出や登録を義務付けられている制度です。

これは、動物愛護法に基づく制度であり、適切な飼養管理を促進し、動物の福祉向上を目的としています。

動物取扱業には、第一種動物取扱業と第二種動物取扱業の2種類があり、保護譲渡については営利目的か非営利目的かによって届出の種類が異なります。

3. 動物取扱業の届出の種類

(第一種動物取扱業)

営利目的で動物を扱う事業者が対象となり、以下の業種が含まれます。

  • 販売業(ペットショップ、ブリーダーなど)
  • 保管業(ペットホテル、トリミング、ペットシッターなど)
  • 貸出業(レンタルペット、映画やテレビ撮影用の動物派遣など)
  • 訓練業(しつけ教室、トレーニング施設など)
  • 展示業(動物カフェ、動物園など)
  • 譲受飼養業(老犬老猫ホームなど)

(第二種動物取扱業)

第二種動物取扱業は営利目的ではなく、一定の条件を満たした非営利の活動が対象です。

  • 一定数以上の保護どうぶつを継続的に保護・管理する保護団体やボランティア活動も対象となる。
  • 動物の適正な飼養管理を求められ、不適切な管理や動物虐待を防ぐために自治体への届出が必要となる。

この届出は、特定の地域や規模を超える保護活動を行う団体に義務付けられており、「動物を取り扱う責任」が問われる仕組みとなっています。

4. 動物病院が保護活動をする際に気をつけるべきポイント

① 譲渡を行う際、「販売」とみなされるケースがある

動物病院が譲渡を行う場合、営利目的とみなされても「販売」の届出を行っていれば問題はありません。
しかし、届出を行っていない場合、営利目的と誤解されないよう慎重に譲渡活動を行う必要があります。

②「販売に当たらない譲渡」とは?

保護どうぶつの譲渡を行う際、譲渡金とコストの関係が重要なポイントになります。

(販売とみなされるケース)

  • 譲渡金額が「経費実費」を超えている場合
  • 譲渡金を一律にしている場合、注意が必要

若い個体で、初期予防と短期間の保護期間で譲渡できることもあれば、傷病など高額な医療費がかかるなど譲渡困難で譲渡まで時間がかかり飼育費用がかさむこともあります。

個々にかかるコストには差があり、一律の譲渡金を設定し複数頭の保護どうぶつの譲渡金で過不足を賄う考え方は保護活動の中では一般的ですが、個体ごとに見た時に保護に関わる経費(医療費・飼育経費)より譲渡金が高くなると利益が出るため、営利とみなされ、販売業とされます。

(販売とみなされないケース)

  • 譲渡金がワクチン代・不妊手術代などの実費以下の場合
  • 譲渡金の内訳明細が出てる場合

③ 飼育困難どうぶつを有償で預かると譲受飼養業にあたることがある

飼育継続困難などで飼育費用の実費以上の請求をする場合、譲受飼養に当たる場合があります。

飼育動物であれば、保管業(ペットホテル)として対応することも可能かもしれませんが、野良猫や飼育者不明の犬猫の保護などで保護主への請求は注意が必要です。

5. さいごに

保護譲渡を行う際には、動物取扱業の届出が関係するケースがあるため、その制度を正しく理解することが重要です。

実費以上の経費を保護主や譲渡先に請求した場合、営利とみなされ、【販売】【譲受飼養】に当たるケースがあります。

直近ボランティアさんに相談を受け問い合わせた事例をご紹介します。

【相談内容】

片目がつぶれた、削痩の激しい猫を保護。
保護主は出張も多く、ペット飼育不可住居のため一時飼養はできず、里親のあてもない。
猫の状態も悪く、譲渡することは厳しい状況。
医療費や飼育費用の負担はしたいので、保護してほしい。
ボランティアさんは1ヶ月いくらという飼育費用を頂くことは可能か?

【動物愛護センターに問い合わせ】

実費経費を超える定額の費用請求は、第一種動物取扱業の【譲受飼養】に当たる。
医療費、フード代など明細などが出るもののみの請求であれば非営利活動の範囲で可能とのこと。
猫の飼育には水道光熱費、家賃などの預かり場所の経費含めたその他経費がかかることなども伝えたが、その猫にいくらかかったと明確な金額が出ないものは請求はできないとの回答でした。

今回は私自身が過去問合せなどをした内容も含めてまとめました。

自治体、その時々によって見解が異なる場合がありますので、保護譲渡を行う上で気になることがある場合はご自身でお問い合わせをすることをお勧めします。

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